渋谷駅西口直結の大規模複合施設「渋谷サクラステージ」が2024年7月に全面開業してから約9ヶ月が経ちました。
しかし、SNSなどでは「ガラガラ」「閑散としている」「廃墟化している」などという噂が広がっています。
渋谷という一等地にある新しい施設がなぜそのような評価を受けているのでしょうか?
今回は実際に現地を訪れ、その実態を調査しました。
記事のポイント
- 渋谷サクラステージ「ガラガラ」や「閑散」という噂の内容
- 低層階の空きテナントの状況と失敗と言われる理由
- 渋谷サクラステージの平日午後の様子
- オフィス入居率が好調な理由と今後の可能性
渋谷サクラステージが「ガラガラ」「閑散」という噂は本当?失敗と言われる理由について現地調査
- 渋谷サクラステージとは
- 渋谷サクラステージが「ガラガラ」「閑散」と噂になっている
- 駅直結の好立地なのに「失敗」と言われる理由
- 低層階の空きテナントの現状
渋谷サクラステージとは
渋谷サクラステージは、渋谷駅西口に直結する桜丘地区に建設された大規模複合施設です。
総事業費約2000億円をかけて開発され、渋谷駅周辺で東急不動産が進める大規模再開発の締めくくりとなる重要プロジェクトとして完成しました。
この施設は主に「SHIBUYA SIDE」と「SAKURA SIDE」の2つのエリアに分かれています。
SHIBUYA SIDEのタワーは地上39階建て・高さ179メートル、SAKURA SIDEのタワーは地上30階建て・高さ127メートルとなっており、2つの建物は通路でつながれています。
施設内にはオフィス、商業施設、住宅、サービスアパートメント、子育て支援施設、国際医療施設、起業支援施設などが設置されており、「働・遊・住」のすべてをシームレスにつなぐコンセプトを掲げています。

渋谷サクラステージ(外観)

渋谷サクラステージ前の交差点
渋谷サクラステージが「ガラガラ」「閑散」と噂になっている
SNS上では渋谷サクラステージが「ガラガラ」「閑散としている」という情報が広がっています。
特に平日の昼間や夜間は人の姿が少なく、新しい施設にもかかわらず寂しい雰囲気だという声もあります。
実際に平日の昼間に訪れてみると、確かに低層階の商業エリアは人の往来が少なく、閑散としている印象を受けました。
しかし、これには様々な要因があるようです。
渋谷サクラステージ空いてるって聞いて来てみたけど、ホントだった。飲食この時間でガラガラで胸が痛むよ(かわいそうで写真なんか撮れない)。渋谷はこれから乱開発のツケを払うことになるなあ。 pic.twitter.com/L46rxM0H3p
— そん哥 (@songyongjian) February 5, 2025
駅直結の好立地なのに「失敗」と言われる理由
渋谷という一等地に位置しながらも、サクラステージが失敗と言われている理由には、いくつかの要因が考えられます。
まず施設の構造的な特徴として、敷地が縦に細長く設計されているため、訪問者が館内を回遊しにくいという課題があります。
店舗数も多くはないため、ショッピングをゆっくり楽しむような空間というよりは、目的の場所に行って用事を済ませるという使われ方が主流になっているように感じました。
また「ときめきステージ」部分は吹き抜けになっていておしゃれな空間になっていますが、雨や風が強い日には不便を感じることもあります。

渋谷サクラステージ:ときめきSTAGE
立地面では、渋谷サクラステージがある渋谷駅の南側エリアはIT企業が集積しているビジネス街となっており、アルサーガパートナーズやSansan、スクエアエニックスなどの有名IT企業が入居しています。
隣接する渋谷ストリームにはGoogle日本法人の本社オフィスが移転したことでも話題になりました。
この南側エリアの特性は、道玄坂やセンター街、MIYASHITA PARKなど若者が行き交う渋谷の他のエリアとは大きく異なり、「働く人が多いエリア」という印象です。
そのため、駅前に集まるのは会社員らしき人の姿が多く、商業施設としては飲食店やコンビニ・ドラッグストアなど日常的に利用できる店舗が多いのも特徴です。
さらに、2024年7月21日に開設されたJR渋谷駅の新南改札は、サクラステージと直結する利便性がありながらも、まだ認知度が低く、利用者も他の改札に比べて少ない状況です。

JR渋谷駅の新南改札の入口
地下鉄の駅からの桜丘地区へのアクセスも分かりにくい面があり、人の流れを生み出すには時間がかかりそうです。
これらの要因が複合的に影響し、立地の良さを活かしきれていない現状があると言えるでしょう。
低層階の空きテナントの現状
実際に現地を歩いてみると、特にSHIBUYA SIDEの低層階には空きテナントが目立ちます。
しかし、空きテナントのガラス面には絵が貼られており、一見すると空きテナントに見えないよう工夫されているようです。

渋谷サクラステージB1:テナント募集の張り紙
これは他の閑散としているビルで見られるような「空きテナント案内板」とは異なるアプローチで、施設の見た目を保つための配慮と思われます。
立て続けに渋谷エリアで新しい商業施設が開業したため、好立地な店舗物件の供給が増え、テナントの取り合いになっている可能性もあります。
また、サクラステージのある桜丘エリアがスクランブル交差点などの渋谷の中心部から少し離れていることも、テナント入居が進まない一因かもしれません。

渋谷サクラステージ3階:SHIBUYA SIDEとSAKURA SIDEの連絡通路
渋谷サクラステージ周辺を散歩した動画をYouTubeで公開しています。
動画の方が見やすい方は下のリンクから動画をご覧ください。
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- 渋谷駅から西口地下歩道で渋谷サクラステージへ行く方法
- 低層階は空きテナントだらけで閑散としている
- 隠れた賑わいを見せる一部エリア:3階スクエニショップと4階フロア
- 失敗ではなく実は好調?注目すべきはオフィスビルの高い入居率
- 渋谷駅再開発の様子と今後の可能性
渋谷駅から西口地下歩道で渋谷サクラステージへ行く方法
サクラステージへは、渋谷駅の新南改札から直接アクセスできます。
また、スクランブル交差点やハチ公前からは「西口地下歩道」を通って地下からのアクセスも可能です。
しかし、この地下歩道はまだあまり知られていないのか利用者が少ない印象でした。
一方で、地下歩道から入る渋谷サクラステージB2にあるマクドナルドは非常に混雑しており、局所的に人気のスポットもあることがわかりました。
全体としての人の流れがまだ確立されていないようです。

渋谷サクラステージB2:マクドナルド前
低層階は空きテナントだらけで閑散としている
実際に現地を調査したところ、特にSHIBUYA SIDEの低層階では空きテナントが目立ちます。
興味深いのは、これらの空きスペースの多くが一見するとテナント募集中という印象を与えないよう工夫されている点です。

渋谷サクラステージB1:空きテナント
空きテナントの壁面にはアーティスティックなイラストが描かれており、パッと見ただけでは「デザインの一部なのか、それとも未入居スペースなのか」判別しにくい状態になっています。
しかし、周囲をよく観察すると、明らかに営業している店舗が少なく、これらのおしゃれな壁画は実は空きテナント対策である可能性が高いです。
一方で4階の「FOOD MET」では、17店舗が集まるフードホールとしてランチタイムには一定の賑わいがありました。
特に注目すべきは、その利用者の特徴です。
多くはこのビルで働くIT企業の会社員と思われる人々が目立ち、カジュアルな服装ながら首からIDカードが入ったストラップをぶら下げている姿が印象的でした。

渋谷サクラステージ4階:FOOD MET
興味深いことに、飲食店舗の間には専用ドアが設置されており、そこからエレベーターでオフィスフロアに直接アクセスできるようになっています。
この構造からも、「FOOD MET」が主にオフィスワーカー向けの飲食空間としても機能していることがうかがえます。
ミシュラン星付きシェフの新業態やポップアップレストランなど、質の高い飲食体験を提供している点も、ハイテク企業で働く若手社員の嗜好に合わせた戦略なのかもしれません。
また、「にぎわいSTAGE」と呼ばれるイベントスペースは曜日や時間帯によって人の多さに差があるようです。
特徴的なデザインの階段「しぶS」は、インスタ映えするスポットとして期待されていたようですが、訪問時には思ったほど撮影を楽しむ人の姿は見られませんでした。

渋谷サクラステージ:にぎわいSTAGE

渋谷サクラステージ:しぶS
隠れた賑わいを見せる一部エリア:3階スクエニショップと4階フロア
全体的に閑散としているという評判の渋谷サクラステージですが、一部のエリアでは確かな賑わいを見せています。
特に3階にあるスクウェア・エニックスのオフィシャルグッズショップは、外国人観光客らしき人々で賑わっていました

渋谷サクラステージ3階:スクウェア・エニックス ガーデン
また、4階のTSUTAYA BOOKSTOREは渋谷エリア最大級となる約16万冊の在庫を誇り、一般の買い物客だけでなく、サクラステージのオフィスで働く人々の利用も多く見られました。

渋谷サクラステージ:TSUTAYA BOOKSTORE
書店に併設された「SHARE LOUNGE」は、混雑を避けたい人にとっての“穴場”とも言える空間です。

渋谷サクラステージ4階:シェアラウンジ
同じ4階には「404 Not Found」というインディクリエイター向けの創作拠点もあります。
調査時には「SNSって結局、どうすればいいの?」というIT企業集積地ならではのイベント準備が進められていました。

渋谷サクラステージ4階:404 Not Found
サクラステージ全体としては人の流れが少ない印象は否めませんが、これらの一部エリアには独自の魅力があります。
むしろ混雑が苦手な人にとっては渋谷にありながら落ち着いて時間を過ごせる穴場とも言えるでしょう。
失敗ではなく実は好調?注目すべきはオフィスビルの高い入居率
渋谷サクラステージの商業エリアに課題がある一方で、オフィスフロアは非常に好調のようです。
テナント入居率は順調で、特にIT系企業の入居が進んでいます。
不動産開発においては、オフィスフロアが埋まっていれば収益的には順調と評価されるため、ビルとしては「事業的に成功」と言える側面があります。
実はサクラステージの商業階は結構な割合が地権者床で、所有者に自由にリーシングさせてるからガラガラでも問題ないらしい。
この施設に関してはオフィス階とレジが爆益だから、商業はオマケ的立ち位置と思われる。 https://t.co/aNmn7uIkSf
— 生パスタ(著書「YouTube成功のツボ77」) (@yt_map) February 1, 2025
東急不動産の星野浩明社長によれば、渋谷サクラステージは約1万人が働く場所となり、駅の新南改札が開通したことで今後さらなる賑わいが期待されています。
また、契約率は90%を超えており、高品質なオフィス環境を求める企業のニーズを満たしているようです。
特に若者に人気の渋谷という立地は、企業の採用活動に有利に働くという利点もあります。
参考記事
サクラステージ「ガラガラ」への誤解…東急の渋谷再開発が予想以上に成功のワケ
Business Journal
渋谷駅再開発の様子と今後の可能性
渋谷駅周辺では、かつてない規模の再開発プロジェクトが進行中です。
2005年に渋谷駅周辺139haのエリアが「都市再生緊急整備地域」に指定されて以降、東急不動産を中心に「渋谷ヒカリエ」(2012年)、「渋谷ストリーム」(2018年)が開業。
その後も「渋谷スクランブルスクエア」(2019年)、「渋谷ソラスタ」「渋谷フクラス」(同年)といった大規模複合施設が次々と開業してきました。
渋谷駅周辺の再開発は、訪れるたびに状況が変化しているほど大規模なものです。

工事中のJR渋谷駅西口(2025年3月撮影)
2027年度には東急百貨店本店の跡地にリテール、ホテル、レジデンスなどからなる施設が竣工予定となっており、今後も発展が続く見込みです。
オフィス街としての渋谷は予想以上に成功していると評価する声もあります。
鉄道網の充実により交通のハブとしての機能が強化され、どこからでもアクセスしやすくなったことが大きな利点となっています。
参考記事
令和にビットバレー再来? 駅直結「渋谷サクラステージ」にIT企業が集結
日経クロステック
https://bookplus.nikkei.com/atcl/column/041900367/041900002/
最新鋭のオフィスビルが建設されたことで、特にIT系企業の集積が進んでいます。
一方で、IT業界に偏った産業構造は、業界全体が不調になった場合に渋谷の街全体が厳しい状況に陥るリスクもあるとの指摘もあるようです。
以上が渋谷サクラステージの現状と渋谷駅周辺の再開発の様子です。
確かに渋谷サクラステージは低層階の商業エリアは期待されたほどの賑わいを見せていませんが、オフィスの入居率は高く、ビジネス面では成功していると言えるでしょう。
今後、テナントの入居が進み、新南改札の認知度が上がるにつれて、状況は変化していく可能性があります。
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以下、記事のポイントをまとめます。
まとめ
- 渋谷サクラステージは2024年7月に全面開業した総事業費約2000億円の大規模複合施設
- SNS上では「ガラガラ」「閑散」「廃墟化」といった噂が広がっている
- 施設は「SHIBUYA SIDE」と「SAKURA SIDE」の2つのエリアに分かれている
- 敷地が縦長で回遊性に欠けるため、商業施設としての魅力が薄いと評価されている
- 渋谷の街自体がオフィス街へと変貌したことで、商業施設よりもビジネス用途が優先
- 特にSAKURA SIDEの低層階には空きテナントが目立つ
- 空きテナントのガラス面には絵が貼られており、空き店舗に見えない工夫がされている
- JR渋谷駅の新南改札が2024年7月21日に開設されたが、認知度はまだ低い
- 4階の「FOOD MET」など一部エリアには一定の賑わいが見られる
- オフィスフロアのテナント入居率は90%を超えており、ビジネス面では「成功」と評価できる
- IT系企業が多く集まっているため、IT業界全体が不調になった場合のリスクも指摘されている
- 渋谷駅周辺の「100年に1度」の再開発は2027年度まで続く予定で、今後も状況は変化していく可能性がある